第164章 昏睡に陥る

江川徹哉の目の前でエアバッグが弾けた。

頭がハンドルに叩きつけられ、血がつうっと流れる。人はそのまま意識を失った。

野口凛だけが、いちばん軽傷だった。

シートベルトを両手で必死に掴み、怯えきった目で前を見据える。顔色は紙みたいに真っ白で、かすれた声で呟いた。

「……姉さん……」

スマホは通話のままだった。

向こうの警察官も、こちらの衝突音を確実に聞いたのだろう。さっきまでのぞんざいさは消え、声色が一気に切り替わる。

「野口さん、大丈夫ですか! こちら、すぐ向かっています! どうか、意識を保ってください!」

その瞬間、凛のスマホが床へ落ちた。受話口の向こうの声はもう判然としない...

ログインして続きを読む